酒売が花道に現れて助六を呼び止める
酒売が花道に現れて助六を呼び止める。助六はぶしつけな呼び声に怒る。「どいつだ。大どぶへさらい込むぞ、鼻の穴へ屋形船を蹴込むぞ。(節をつけて)こりゃまた何のこったい」 呼び止めた男、白酒売新兵衛の顔を見ると、なんとそれは曾我十郎祐成、すなわち五郎の兄ではないか。新兵衛は、助六(曾我五郎時致)が無法な喧嘩三昧の日々を送っていることを指摘し、いさめた。助六は、源氏の宝刀・友切丸が紛失したままになっていることを指摘した。友切丸紛失の責任を、兄弟の義理の父・曾我祐信が負わされたのだ。その刀を詮議するため、他人に刀を抜かせる、抜かせるために相手を怒らせる、相手を怒らせるために喧嘩を吹っかけているのだ、喧嘩は全て宝刀の捜索のためであると、真実を明かした。新兵衛はもちろんその言を受け入れた。兄は弟の喧嘩を奨励するのだった。それだけでなく、新兵衛自身も「喧嘩のやり方」を助六から習う。上品で和事の極致にいるような兄が見よう見まねで喧嘩のまねごとをするが、まったく迫力がない。「おかしみ」のつきない和事らしい一幕である。
股くぐり [編集]
二人が遊里の客にだれ構わず股くぐりをしかけて喧嘩を売る。長い劇の合間の息抜きの役割をなす。最初は田舎侍と国奴。二人は黙劇で演じる。続いて通人・里暁が出てくる。通人は当世風の当て込みやくすぐりを即興で言い客席を大いに沸かせる。戦後は三代目河原崎権十郎のものが絶品だった。
満江の出 [編集]
と、三浦屋から揚巻とともに、編み笠をかぶった人物が登場する。刀を差している。その人物は武士のように見える。助六は、恋人の揚巻が自分以外の男を連れていると思いこむ。助六は先ず揚巻を罵る。ついでその人物に悪態をつき、喧嘩腰で“口撃”をする。「侍、待ちやがれ」 その人物が編み笠を自ら取る。その人物は、兄弟の母である満江だった。兄の十郎はそれとは知らず喧嘩を売るがこれまたびっくり。二人は小さくなっている。満江は子供たちを叱り飛ばす。
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「毎日、毎日喧嘩ばかりしやるげな。先刻も人の頭にうどんを掛けたり、下駄を載せたり、無法と言おうか。・・・竹町で竹割にしたは誰じゃ。助六。砂利場で砂利の中にぶちこんだは誰じゃ。助六。馬道で跳ね倒したは誰じゃ。助六。あまりのことに、そりゃ雷門で臍を抜いたは誰じゃ。助六じゃ。ほんにやれ烏の鳴かぬ日はあれど、そなたの喧嘩の噂を聞かぬ日とてはない。」
助六は自分の不明を恥じ、じっとこらえる(辛抱立役)。しかし助六はさっきと同じ説明、つまり「友切丸」捜索のためにやむなく喧嘩をしているのだと説明。満江は納得するも二度と喧嘩はならぬと、紙子の服を着させる。和紙で作った服なので破れやすい、もしやぶれば勘当という意味である(助六の着る紙子は上方版助六を茶化したものある)。満江は白酒売とともに花道にひっこむ。この幕では、揚巻は恋人の母である満江に尽くす世話女房としての部分を見せなければならないとされる。
満江は老女方。風格がなければならない。戦後は三代目尾上多賀之丞が、現在では六代目澤村田之助が得意としている。
揚巻助六の痴話喧嘩 [編集]
揚巻と助六が舞台に残される。痴話喧嘩をする。九代目團十郎が排除し、後世の演出もそれを踏襲している。
意休再登場 [編集]
意休が三浦屋から再度姿を現した。助六は揚巻の内掛けの裾を陰に長椅子の下に隠れる(ここも上方版助六の風刺である)。意休は揚巻の隣に座り、愛を語るが、そのたびに意休の足をつねる者がいる。子供(禿)のいたずらだろうか? 否、禿をひっこめてもつねる手はどこかから出てくる。揚巻は言う。それは鼠の仕業ではないかと。意休は返す。その鼠は助六であろう。そして助六に説教をする「そんな根性で『大願成就』するものか。ここな(曾我五郎)時致の腰ぬけめ」 意休は確かに助六の本名を、隠さなくてはならない秘密を口にした。実は意休は初めからこのことを知っていた。そして意休は説教をし、扇で助六をしたたか殴打する。助六は自分が悪いのだからいくらでも打てという。意休は説教を続ける。香炉台の前に立ち、曾我の三人兄弟は力を合わせるのが大切だと説く。このとき、助六に対し、曾我三兄弟で源頼朝を裏切れ、そのときは自分(意休)も力を貸す、と助六をそそのかす。もしも兄弟がバラバラになるとこの香炉台のように(と刀で香炉台を真っ二つにして)倒れると諭す。しかし、助六は確かに見た。一瞬だけ意休が刀を抜いたときにその刀の銘を見た。意休の刀は確かに友切丸であった。意休はそのまま三浦屋にひっこむ。待て意休、この刀は確かにもらうぞ、と助六は意気込みながら花道にひっこむ。大正以降の現行の演出の多くはここまでで幕となり、終了する。
水入り [編集]
「水入り」の部分はたいてい省略される。
それから時間が経って、意休が三浦屋から出てくる。助六は待ち伏せしていた。立ち回りがあって、助六は意休を切る。たまたま通りかかった人が意休の死体を発見するが、助六はその通行人の提灯を切り落とす。追手が助六を捜索する。舞台下手に天水桶がある。助六はその天水桶の中に隠れる。ザブーンと水が派手にこぼれる。桶から出る。当然水浸しである。追手に見つかる。と、揚巻が急いで近づき、全身で助六を隠す。追手が去る。助六は気を失っているようである。揚巻は助六に気付けの水を含ませて、肌と肌を合わせ、じっと抱きしめる(濡れ場。劇団前進座はこの場面を復活させようとするが、警察の検閲で猥褻とされ、戦前はかなわなかった。戦後になって復活させることができた(1946年7月、大阪歌舞伎座以降)。友切丸は助六の手に入り、捕り手がでてきて助六、揚巻による引っ張りの見得で幕となる。美男の八代目市川團十郎が水入りを演じた際、天水桶の水を江戸中の婦女子が買いもとめたという。
助六寿司 [編集]
稲荷鮨と巻寿司(太巻きや干瓢巻きなど)を折り詰めた箱寿司のことを「助六」という。これは助六の愛人・揚巻の名が稲荷の「油揚」と「巻寿司」に通じることを洒落た命名。